本屋大賞を知っていますか?子ども向けの歴代受賞作品も紹介

この記事は5286文字です。
約4分で読めたら読書速度1200文字/分。

本屋大賞を知っていますか?
大賞の発表時期が近づくと、本屋さんに特設コーナーが設けられたり、メディアで話題になったりすることも多く、本好きな人にとっては楽しみな賞のひとつです。

今回は2024年の受賞作品と、子どもにもおすすめの歴代受賞作品をご紹介します。

本屋大賞とは

本屋大賞とは、オンラインを含む新刊を取り扱っている本屋さんで働いている店員さんの投票のみで選ばれる賞のことです。
過去一年の間、店員さん自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票します。

※参考:本屋大賞とは|本屋大賞

店員さんが選ぶということもあり、読者に近い視点から選ばれた作品が多いので、比較的読みやすい作品がノミネートされています。

速ドッグロボ

ノミネートや受賞の基準

本屋大賞には部門が3つ設けられており、対象作品の中から大賞が決定します。
2024年度は以下の日程で刊行された作品が対象でした。

2024年度本屋大賞 対象作品

2022年12月1日〜2023年11月30日の間に刊行された日本の小説(判型問わずオリジナルの小説)

また、本屋大賞の中には「翻訳小説部門」と「発掘部門」という部門も設けられています。
翻訳小説部門は、本屋大賞の同じ対象日程で刊行された翻訳作品の中から選考されます。
「発掘部門」は、「すでに刊行されている作品にも再度注目してほしい」という狙いから設けられた部門で、過去に出版された本のなかで、今読み返してもおもしろいと店員さんが思った本を選び、投票します。

※参考:本屋大賞とは|本屋大賞

選考方法

本屋大賞、翻訳小説部門、発掘部門で選考方法が異なりますが、本記事では本屋大賞にフォーカスしてご紹介します。

本屋大賞選考方法

1. 一次投票で一人3作品を選んで投票。
2. 一次投票の集計結果、上位10作品をノミネート本として発表。
3. 二次投票はノミネート作品をすべて読んだ上で、全作品に感想コメントを書き、ベスト3に順位をつけて投票。
4. 二次投票の集計結果により大賞作品を決定。

2024年度の本屋大賞

本屋大賞は2024年度で21回目を迎えました。
一次投票は全国の530書店より書店員736人、二次投票では342書店より書店員443人が投票しました。

※参考:本屋大賞

受賞作品

2024年4月10日、本屋大賞受賞作品が発表されました!

順位 書籍名 作家・出版社
大賞 成瀬は天下を取りにいく 宮島未奈(著)/新潮社
2位 水車小屋のネネ 津村記久子(著)/毎日新聞出版
3位 存在のすべてを 塩田武士(著)/朝日新聞出版
4位 スピノザの診察室 夏川草介(著)/水鈴社
5位 レーエンデ国物語 多崎礼(著)/講談社
6位 黄色い家 川上未映子(著)/中央公論新社
7位 リカバリー・カバヒコ 青山美智子(著)/光文社
8位 星を編む 凪良ゆう(著)/講談社
9位 放課後ミステリクラブ1金魚の泳ぐプール事件 知念実希人(著)/ライツ社
10位 君が手にするはずだった黄金について 小川哲(著)/新潮社

大賞を受賞した「成瀬は天下を取りにいく」は女子中学生・成瀬が主人公の青春小説。
「中高生におすすめする司書のイチオシ本 2023年版」でも1位を獲得しており、中高生にも読みやすい一冊です。

9位に入賞した「放課後ミステリクラブ1金魚の泳ぐプール事件」は児童書で史上初の本屋大賞にノミネートされました。
全国学校図書館協議会選定図書でもあり、小学生にもおすすめの一冊です。

2024年度は子どもにも読みやすい作品のノミネートがありました。
特設コーナーが設けられている書店もあるので、ぜひ立ち寄って手に取ってみてください!

2023年度の受賞作品

2023年度は一次投票に全国471書店より書店員615人、二次投票では333書店より書店員422人の投票で受賞作品が決定しました。

順位 書籍名 作家・出版社
大賞 汝、星のごとく 凪良ゆう(著)/講談社
2位 ラブカは静かに弓を持つ 安壇美緒(著)/集英社
3位 光のとこにいてね 一穂ミチ(著)/文藝春秋
4位 爆弾 呉勝浩(著)/講談社
5位 月の立つ林で 青山美智子(著)/ポプラ社
6位 君のクイズ 小川哲(著)/朝日新聞出版
7位 方舟 夕木春央(著)/講談社
8位 宙ごはん 町田そのこ(著)/小学館
9位 川のほとりに立つ者は 寺地はるな(著)/双葉社
10位 #真相をお話しします 結城真一郎(著)/新潮社

凪良ゆうさんは2020年「流浪の月」に続き二度目の本屋大賞受賞。「流浪の月」は実写映画化され、話題になりました。
今回の受賞作「汝、星のごとく」は第168回直木賞の候補にも選ばれています。

8位「宙ごはん」の著者・町田そのこさんは2021年に「52ヘルツのクジラたち」で本屋大賞を受賞されていたり、10位「#真相をお話します」は第74回日本推理作家協会賞短編部門受賞作品が収録されていたりと、今回のノミネートも注目作品が多くなりました。

2022年度の受賞作品

2022年度は一次投票に全国483書店より書店員627人、二次投票では322書店より書店員392人の投票で受賞作品が決定しました。

順位 書籍名 作家・出版社
大賞 同志少女よ、敵を撃て 逢坂冬馬(著)/早川書房
2位 赤と青とエスキース 青山美智子(著)/PHP研究所
3位 スモールワールズ 一穂ミチ(著)/講談社
4位 正欲 朝井リョウ(著)/新潮社
5位 六人の嘘つきな大学生 浅倉秋成(著)/KADOKAWA
6位 夜が明ける 西加奈子(著)/新潮社
7位 残月記 小田雅久仁(著)/双葉社
8位 硝子の塔の殺人 知念実希人(著)/実業之日本社
9位 黒牢城 米澤穂信(著)/KADOKAWA
10位 星を掬う 町田そのこ(著)/中央公論新社

見事2022年度の本屋大賞を受賞した『同志少女よ、敵を撃て』という作品は、優れたミステリ小説作品に贈られるアガサ・クリスティー賞で全選考委員が満点をつけたことで話題になりました。
デビュー作品にも関わらず多方面からの評価が高く、本屋大賞以外にも第9回高校生直木賞も受賞し、2022年いちばん売れた小説でランクインするなど、大変話題になった作品のひとつです。

子ども向けの受賞作品をご紹介

過去に大賞を受賞した作品の中から子ども向けの作品をご紹介します。
年齢や本の読み進め方によっては少し難しく感じてしまう作品もあるかもしれませんが、映画化されていたり、身近な環境がテーマになっていたりする作品も多いので、感想文の課題などの参考にしてみてくださいね。

小学生向け

夜のピクニック

恩田陸(著)/新潮文庫
2005年度受賞

高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。

2006年には映画化もされている本作品。
高校生の話ですが、さまざまな感情が丁寧に描かれているので、心の成長過程である小学校高学年の子どもたちにとっては共感できたり、新鮮に感じられたりすることが多い作品かもしれません。

かがみの孤城

辻村深月(著)/ポプラ社
2018年度受賞

学校での居場所をなくし、閉じこもっていた“こころ”の目の前で、ある日突然部屋の鏡が光りはじめた。
輝く鏡をくぐりぬけた先にあったのは、お城のような建物。そこにはオオカミのお面の少女によって、6人の子どもたちが集められていた。
子どもたちにはある共通点が!?
“オオカミさま”は城に隠された鍵を見つければ、願いが叶えられると言うけれど……。

アニメ映画化のほか、コミカライズ、舞台化がされている作品。
元々は一般読者向けに刊行された作品ですが、本を読みなれていない子どもにも読みやすいよう、漢字へのふりがなや挿絵が追加され児童文庫として刊行されました。
登場する中学生たちが抱える悩みに共感できる部分も多いのではないでしょうか。
長文の作品ではありますが、最後まで読むとわかる驚きもありますよ。

中学生・高校生向け

一瞬の風になれ(第1部~第3部)

佐藤多佳子(著)/講談社文庫
2007年度受賞

春野台高校陸上部、1年、神谷新二。スポーツ・テストで感じたあの疾走感……ただ、走りたい。天才的なスプリンター、幼なじみの連と入ったこの部活。すげえ走りを俺にもいつか。デビュー戦はもうすぐだ。「おまえらが競うようになったら、ウチはすげえチームになるよ」。青春陸上小説、第1部、スタート!

漫画化もされているこちらの作品は、高校生の部活動がテーマになっています。
中学校、高校で部活動に入部していたり、スポーツに打ち込んでいたりする子どもたちにとっては、共感できる部分も大変多く、思わず感情移入してしまうでしょう。
3部構成になっていて少し長く感じるかもしれませんが、ラストに向かうにつれて登場人物たちも成長していくので、 楽しく読み進めることができる作品になっています。

蜜蜂と遠雷

恩田陸(著)/幻冬舎文庫
2017年度受賞

3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。「ここを制した者は世界最高峰のS国際ピアノコンクールで優勝する」ジンクスがあり近年、覇者である新たな才能の出現は音楽界の事件となっていた。
養蜂家の父とともに各地を転々とし自宅にピアノを持たない少年・風間塵16歳。かつて天才少女として国内外のジュニアコンクールを制覇しCDデビューもしながら13歳のときの母の突然の死去以来、長らくピアノが弾けなかった栄伝亜夜20歳。音大出身だが今は楽器店勤務のサラリーマンでコンクール年齢制限ギリギリの高島明石28歳。完璧な演奏技術と音楽性で優勝候補と目される名門ジュリアード音楽院のマサル・C・レヴィ=アナトール19歳。
彼ら以外にも数多の天才たちが繰り広げる競争という名の自らとの闘い。 第1次から3次予選そして本選を勝ち抜き優勝するのは誰なのか?

第156回直木賞も受賞している本作品は2019年に映画化もされています。
作品の中にはたくさんのクラシック音楽が登場しますが、読みながらピアノの音色が自然とイメージできるような巧みな文字表現、そして登場人物の感情や情景も丁寧に描かれています。文字数も大変多いので躊躇する方もいるかもしれませんが、ページをめくる手が止まらなくなるほどのめり込んでしまうでしょう。

まとめ

本屋大賞は新しい本に出会えるチャンス

  • 店舗の特設コーナーで書店員さんのおすすめ作品を見てみよう
  • 書店員さんのおすすめポイントが新しい本と出会えるきっかけに
  • 過去の受賞作は映像化されているので、映画を観てから読むのもおすすめ

本屋大賞は2004年に設立された新しい賞ですが、時期がくるとメディアでも話題になるくらいの知名度があります。
過去の受賞作品でも知っている作品があるかもしれません。ぜひ大賞発表までの間に書店を訪れて、書店員さんのおすすめ作品を探してみてください。
自分では見つけることができなかった新しい作品に出会えるかもしれませんよ。

関連キーワード

人気記事

時代とともに変化する!?日本の語彙
2023.02.17

言葉の意味は時代と共に変わる!?変化する日本語の語彙

日常の会話やコミュニケーションなど、生活に欠かせないのが母国語の『語彙』です。文化庁が実施した調査の結果でも、言葉やその使い方について、社会全般の課題があると答えた人が8割を超える結果となっています。

2024年度実施 大学入学共通テスト国語 文字数を分析
2024.01.22

2024年度実施 大学入学共通テスト 国語 文字数を分析 難易度は昨年並みだが、速読解力は必須

2024年1月13日、2024年度(令和6年度)大学入学共通テスト1日目が行われました。国語は、文字数は昨年並み。出題意図が明確な問題が多かったものの、昨年同様複数の文章や資料を関連付けて答えを導き出す力が必要です。

2024年度実施 大学入学共通テスト英語 語数を分析
2024.01.22

2024年度実施 大学入学共通テスト 英語 語数を分析 3年連続6,000語超え

2024年度(令和6年度)大学入学共通テストが、2024年1月13、14日に行われました。リーディングでは3年連続で6,000語を超え、リスニングでは今年も非英語母語者が混じる会話や、グラフや図と絡めた出題がみられ、総合的な英語力が問われました。