小学校の国語が変わる!新指導要領で進める授業内容とは
公開日:2022.11.02
最終更新日:2022.12.23
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小学校では、2020年度より新指導要領に基づいた授業がスタートしました。
約10年ぶりに改定された新学習指導要領では、変化が激しい時代を生き抜いていく子供たちの成長を支える内容で構成されています。
今回は、小学校の国語をクローズアップします。
目次
新指導要領が目指す方向性
新指導要領では「子どもたちが自分で未来を切りひらいていけるように、生きていくための資質・能力を育んでいく」ことを重視し、「生きる力」を3つ掲げています。
3つの力と合わせて、国語科で目指すべき力を「国語で正確に理解し適切に表現する資質・能力」と定めました。
また、児童が「言葉による見方・考え方」を働かせることも必要であると示し、以下のように構成し直されました。
これまでの指導要領 | 新しくなった指導要領 |
---|---|
伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項 | 知識及び技能 (1)言葉の特徴や使い方に関する事項 (2)情報の扱い方に関する事項 (3)我が国の言語文化に関する事項 |
「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の3領域 | 思考力、判断力、表現力等 (A)話すこと・聞くこと (B)書くこと (C)読むこと |
「知識及び技能」と「思考力、判断力、表現力等」は、国語で正確に理解し適切に表現する際に必要不可欠な力です。
また「知識及び技能」を、国語で理解したり表現したりする際に発揮していくために、思考・判断・表現しながら力を育んでいくことも求められています。
したがって、「知識及び技能」と「思考力、判断力、表現力等」は共に関連しあいながら育成される必要があるのです。
さらに3つの力のひとつ「学びに向かう力・人間性の育成」で育んだ「学びへの積極的な姿勢」が、「知識及び技能」や「思考力、判断力、表現力等」の育成にも影響し、次の学びに向かう意欲が高まっていきます。
このように、新しい小学校の国語では、学んだことを自らの言葉や知識を用いて表現すること、そしてそれを繰り返すことで、さらに学びたいという気持ちを育むことを目標としています。
新設・改善された指導内容
新指導要領では、新たな項目の設置と従前の項目内容の改善が実施されました。学年別で育んでいく項目が示されていますが、本記事では全体像をご紹介します。
【新設1】言葉の特徴や使い方に関する事項
言葉の働きや使い方、漢字や語彙の学び方について示されています。
【新設2】情報の扱い方に関する事項
相手の考えを理解したり自分の考えを表現したりするために、話や文章中に含まれている情報を整理することが必要という観点から設けられた項目です。
〇情報と情報との関係
各領域における「思考力、判断力、表現力等」を育成する上では、話や文章に含まれている情報と情報との関係を捉えて理解したり、自分のもつ情報と情報との関係を明確にして話や文章で表現したりすることが重要になる。
〇情報の整理
情報を取り出したり活用したりする際に行う整理の仕方やそのための具体的な手段について示している。
こうした「知識及び技能」を、言語活動の中で使うことができるようにすることが重要である。
【改善】我が国の言語文化に関する事項
昔話や神話といった古典に触れあうことで、言葉の豊かさに気づいたり、さまざまな本に出会えたりすることの大切さ、そして文字の正しい書き方について示されています。
〇伝統的な言語文化
我が国の言語文化に触れ、親しんだり、楽しんだりするとともに、その豊かさに気付き、理解を深めることに重点を置いて内容を構成している。
〇言葉の由来や変化
第3学年及び第4学年では、部首と他の部分とによって漢字が構成されることを知るとともに、実際の漢字についてその構成を理解することを示している。
第5学年及び第6学年では、時間や場所による言葉の変化、言葉の由来に関することについて理解することを示している。
〇書写
文字を書く基礎となる「姿勢」、「筆記具の持ち方」、「点画や一文字の書き方」、「筆順」などの事項から、「文字の集まりの書き方」に関する事項へと、内容を系統的に示している。
〇読書
自ら進んで読書をし、読書を通して人生を豊かにしようとする態度を養うために、国語科の学習が読書活動に結び付くよう発達の段階に応じて系統的に指導することが求められる。
思考力・判断力・表現力の指導も、より明確に
「思考力・判断力・表現力等」の項目では、「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の3領域で構成されていますが、それぞれの「言語活動事例」を設けた授業内容が示されています。
「話すこと・聞くこと」
○話題の設定、情報の収集、内容の検討
日常生活の中から話題を決め、集めた材料から必要な事柄を選んだり、その内容を検討したりすること。
○構成の検討、考えの形成(話すこと)
話の内容が明確になるように、構成を考えることを通して、自分の考えを形成すること。
○表現、共有(話すこと)
適切に内容を伝えるために、音声表現を工夫したり、資料を活用したりすること。
○構造と内容の把握、精査・解釈、考えの形成、共有(聞くこと)
話し手が伝えたいことと自分が聞く必要のあることの両面を意識しながら聞き、感想や考えを形成すること。
○話合いの進め方の検討、考えの形成、共有(話し合うこと)
進行を意識して話し合い、互いの意見や考えなどを関わらせながら、考えをまとめたり広げたりすること。
各学年の活動事例においては、話を伝える側と受け取る側の双方の立場で情報収集や発信を行う内容が示されています。
「書くこと」
○題材の設定、情報の収集、内容の検討
書くことを見付けたり、相手や目的、意図に応じて書くことを選んだりするとともに、必要な材料を整理し、伝えたいことを明確にすること。
○構成の検討
自分の思いや考えが明確になるように文章の構成を考えること。
○考えの形成、記述
自分の考えを明確にし、書き表し方を工夫すること。
○推敲
記述した文章を読み返し、構成や書き表し方などに着目して文や文章を整えること。
○共有
文章に対する感想や意見を伝え合い、自分の文章の内容や表現のよいところを見付けること。
各学年の活動事例においては、実用的な文章を書くことから始まり、学年が進むにつれて文学的な文章を書くという活動が設けられています。
「読むこと」
○構造と内容の把握
叙述に基づいて、文章がどのような構造になっているか、どのような内容が書かれているかを把握すること
○精査・解釈
構成や叙述などに基づいて、文章の内容や形式について、精査・解釈すること。
○考えの形成
文章を読んで理解したことなどに基づいて、自分の考えを形成すること。
○共有
文章を読んで感じたことや考えたことを共有し、自分の考えを広げること。
各学年の活動事例においては、説明文・物語文を読んで感じたことやわかったことを伝えることや、読書を通じて情報を得るという活動が設けられています。
参考:文部科学省 小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 国語編 p28より
まとめ
小学校の国語は、子どもが社会で生き抜く力を育てていく
- 新指導要領の3つの力と合わせて、国語では「正確に理解し適切に表現する 資質・能力」を育む
- 言葉の使い方や情報の取捨選択、そして自国の文化や様々な物語に触れながら、言葉の面白さや可能性を見つけていく
- 6年間を通して「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」を、より実践的に活用していく
新しい小学校の国語の授業では、言葉の大切さや表現方法を学んだり、飛び交う情報をまとめて整理して表現したり、改めて自国の文化に触れて新たな文学と出会う機会を得たりといった、より深く「言葉」にフォーカスした内容になっています。
6年間を通して「言葉」に様々な視点から向き合うことで、変化の大きい社会に順応できる力が身についていくでしょう。
〇言葉の働き
言葉がもつ働きに改めて気付くことで、児童は言葉を自覚的に用いることができるようになる。
〇話し言葉と書き言葉
文字と音声との対応や語の認識、分かりやすく明瞭な話し方などは、音声言語による活動の基盤となるものである。
各教科等の学習においても重要なものとなる。
〇漢字
書きの方が習得に時間がかかるという実態を考慮し、2学年間という時間をかけて、確実に書き、使えるようにすることとしている。
また、読みについては、当該学年に配当されている漢字の音読みや訓読みができるようにすることとしている。
〇語彙
学習の中で語句を使うことを通じて、日常生活の中でも使いこなせる語句を増やし、確実に習得していくことが重要である。
〇文や文章
主語と述語、修飾と被修飾との関係などに加えて、語順などの特徴についても理解すること、指示する語句や接続する語句の役割についての理解を基盤に、文と文との関係、話や文章の構成や展開などについて理解することを示している。
〇言葉遣い
相手や場面などに応じて言葉を選んだり、適切に使い分けたりすることができるようにし、日常生活の中での使用につながるようにすることが重要である。
〇表現の技法
第4学年までに様々な表現の工夫に触れることを基盤として、第5学年及び第6学年で、比喩や反復などの表現の工夫に気付くことを示している。
〇音読、朗読
〔思考力、判断力、表現力等〕の「(C)読むこと」だけでなく、〔知識及び技能〕の他の指導事項や〔思考力、判断力、表現力等〕の「(A)話すこと・聞くこと」、「(B)書くこと」の指導事項とも適切に関連付けて指導することが重要である。
参考:文部科学省小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 国語編 p17より