【2025年共通テスト】新課程での英語・リーディング問題の変更点は?

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2025年1月18日(土)と19日(日)に、新課程初年度となる共通テストが実施されました。
今回の共通テストは「情報」の出題開始や、「国語の実用的な文章」の出題など、多くの点で注目されていました。

今回は、1月18日に実施された「英語(リーディング)」がどのような出題だったのかを振り返ってみましょう。
なお、リスニングに関しては、最後の設問で話をしている学生数が4人から3人になるなどの細かな違いはありましたが、おおむね例年通りでしたので、ここでは、リーディングで使われていた語彙レベルを中心に振り返っていきます。

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一般社団法人 日本速読解力協会 理事 安田 哲

ライター

安田 哲

一般社団法人 日本速読解力協会 理事

約20年間にわたり首都圏大手進学塾の現場の最前線で、英語・国語を中心に指導。中学受験・高校受験の難関校への多数の合格者を輩出。科目の内容の指導だけでなく、家庭学習管理、生徒・保護者の皆様との面談を多数行う。大学院では言語学を専攻、英語以外の言語に関しても幅広い知識を有する。

出題の全体像

試作問題で発表された2種類の問題が大問に追加された

2022年(令和4年)度に「令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等(※1)」で公表された英語のリーディングの試作問題2種類が、それぞれ大問に追加されました。

試作問題の第A問は「自分の意見の理由や根拠を明確に示すために複数の資料を活用したり、書こうとする文章のアウトラインを組み立てたりすることができるかを問う(※2)」問題で、本試験では「宇宙探検 (space exploration)」がテーマで、試験の最後の第8問に設定されました。

試作問題の第B問は「自分が書いた原稿に対する教師のコメントを踏まえて推敲(※2)」し「読み手に分かりやすいように、文章の論理の構成や展開に配慮して文章を修正することができるかどうかを問う(※2)」問題で、本試験では「現代社会のライフスタイル(スローライフ)」がテーマで、本試験の中盤である第4問に設定されました。

この2つの大問が追加されたことで、大問数は2024年度の6問から8問に増えました。

※1:令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等|大学入試センター
※2:令和7年度大学共通テスト 試作問題「英語」の概要 より引用

長文は2024年度の10本から8本に減り、総出題語数も減少した

2024年度の共通テストでは、第1・2・3・6問が「A」と「B」に分かれて出題されていたので、長文は全部で10本出題されていました。
2025年度の共通テストでは、その区分がなくなって長文の出題数は8本になりました。
これまでよりも一つひとつの長文に時間を割くことができた受験生も多かったかもしれません。

総出題語数は、共通テストが開始された2021年度以降、増加を続けていて、2024年度には約6,300語となりました。
2025年度は約5,600語の出題で、これまで出題語数が多すぎて苦労していた受験生にとっては追い風になったことでしょう。

ただし、共通テストになってからはセンター試験の時代の約4,200語と比べるとおよそ1.3倍の5,500語以上の出題がほぼ定着していると言えそうです。
センター試験時代で出題されていた文法の小問が、共通テストでは出題されないことを考えると、いずれにしても英文を速く正確に読み解く必要はあると言えるでしょう。

設問ごとの出題概要と語彙レベル

ここでは、2025年度の共通テストの出題について、大問ごとに語彙レベルを中心に説明をしていきます。
ここで使っている「語彙レベル」はCEFRの語彙レベルに基づいています。

CEFRのレベルは、英検®で対照すると、A1が英検®3級程度、A2が英検®準2級程度、B1が英検®2級程度、B2が英検®準1級程度となるので、現役の高校3年生だと、B1の一部・B2は少し難しいと感じるかもしれません。

CEFR A1 A2 B1 B2
英検® 3級程度
(中学卒業程度)
準2級程度
(高校中級程度)
2級程度
(高校卒業程度)
準1級程度
(大学中級程度)

※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。このコンテンツは、公益財団法人 日本英語検定協会の承認や推奨、その他の検討を受けたものではありません。

第1問・第2問:語彙のレベルはやや上がった

序盤の第1問・第2問は比較的短い英文での出題で、この傾向は2024年度までの共通テストと同じ傾向です。いずれもあまり時間を掛けずに解きたい問題です。

語彙のレベルを、昨年度の第1問・第2問の合計4本の長文と比較すると、B1レベルの語彙が約8.1%→約9.7%に、B2レベルが約1.6%→約3.9%にそれぞれ増加しています。
試験の最初の方で難しい語彙にぶつかったと感じた受験生もいたかもしれません。

第3問:語彙のレベルは下がり解きやすかった

第3問は比較的読みやすい物語文が出題されました。
語彙のレベルを昨年度の第3問と比較すると、B1レベルの語彙が約8.7%→約5.2%に減少、B2レベルの語彙は約1.6%→約1.7%でほぼ同じでした。
B1レベルの語彙の率が減ったので、読みやすいと思った受験生が多かったかもしれません。

第4問・第5問:いずれも語彙レベルは標準

すでに触れた通り、第4問は試作問題「第B問」のタイプの問題でした。
語彙のレベルは、B1レベルが約11.0%で、2025年度の共通テスト全体(約11.2%)とほぼ同じ比率、B2レベルが約1.9%で、2025年度の共通テスト全体(約3.4%)よりはやや少ない比率だったので、標準的な難易度で読み解きやすい問題だったと言えるでしょう。
試作問題で形式に慣れていた受験生にとっては得点源にできたかもしれません。

また、第5問はメールのやりとりを読む問題で、2024年度は出題のなかったタイプの問題でした。
語彙のレベルはB1レベルが約10.4%、B2レベルが約4.4%で、第4問と比べるとB2レベルの出題がやや増えた印象ですが、全体的には標準的な難易度だったと言えるでしょう。

第6問:物語全体の長さは短くなったが語彙はやや難化

2024年度の第5問と同じく、長い物語文を読む問題でした。
2024年度は3ページにわたって書かれていたものが、2025年度は2ページになり、文章の長さという意味では負担は減ったと言えるでしょう。
語彙のレベルは、B1レベルの語彙が約6.6%→約6.5%でほぼ変わらず、B2レベルの語彙は約1.8%→約4.3%でやや難化したと感じられたかもしれません。
2024年度と同様、展開を追っていく部分でやや読みにくく、解くのに必要な時間と配点のつり合いを考えると後回しにした方が良いかもしれない設問でした。

第7問:語彙レベルはアップしたが読みやすい問題

2024年度の第6問に近い出題で、パラグラフごとに丁寧に論旨を追っていけば解ける問題でした。
語彙レベルはB1レベルの語彙が約11.4%→約19.0%となり大幅に増加しましたが、B2レベルの語彙は約3.6%→約1.7%と減りました。
語彙レベルだけを見ると大幅に難化しているように思えますが、パラグラフごとに丁寧に設問を解いていくことができれば、それほど難しくない問題だったと言えるでしょう。

第8問:試作問題Aのタイプで、語彙レベルは標準的

第8問もすでに触れた通り、試作問題「第A問」のタイプでした。
総語数は多かったものの、3つの段階を経てレポートのアウトラインを作っていく設問だったため、語数の割には解きやすかったかもしれません。
語彙レベルは、B1レベルが約14.3%で、2025年度の共通テスト全体(約11.2%)よりはやや多く、B2レベルが約3.9%で、2025年度の共通テスト全体(約3.4%)とほぼ変わらない比率でした。
最後の大問になるので、ここまで時間を十分残しておくことができれば、比較的得点につながりやすかったと想像できます。

2025年度共通テストは「語数は減少」したが「語彙レベルはやや難化」した

ここまで見てきたように、2025年度の共通テストの総出題語数は、2024年度に比べて約700語の減少となりました。
一方で、語彙レベルを比べてみると、2024年度の出題に比べて、CEFR B1・B2の比率がとも上昇しており、より高い語彙レベルが求められていると言うこともできます。

共通テスト「全体」の語彙レベル(CEFR)比率の比較

A2レベル B1レベル B2レベル
2024年度 14.4% 8.9% 2.4%
2025年度 16.4%↑2%UP 11.2%↑2.3%UP 3.4%↑1%UP

今回は新課程による新しい出題もありましたので、その出題(第4問と第8問)を抜いたもので比較をしてみても、B1・B2レベルの比率がアップしているので、語彙のレベルはこれまで以上に意識して高めておくことが必要かもしれません。

共通テスト「2025年度は第4問と第8問を除く」の語彙レベル(CEFR)比率の比較

A2レベル B1レベル B2レベル
2024年度 14.4% 8.9% 2.4%
2025年度 14.5%↑0.1%UP 10.1%↑1.2%UP 3.5%↑1.1%UP

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本記事ではリスニングに触れていませんが、1回の再生で聴き取る問題があるため、高いリスニング力も必要です。速読聴英語講座にはリスニングのトレーニングも搭載していますので、英語を聴き取る力を鍛えることもできます。

まとめ

問題構成が変化し、大問は増加し長文は減少!
出題語数は減少するも、語彙レベルは難化

  • 大問は8問に増加、長文は8本に減少
  • 出題語数は減ったが、5,500語以上は十分多い!速く正確に読む力は重要
  • 語彙レベルが難化しているため、語彙のレベルアップを意識しよう!

2025年度の共通テスト英語・リーディングでは問題構成に変化が見られ、出題語数が減少した一方で、求められる語彙レベルが難化しました。CEFRのB1・B2レベルの語彙が増加し、受験生にはより高い語彙レベルが求められています。
速く正確に読む力はもちろん必要ですが、様々な英文に触れて語彙を増やすこと・レベルアップも意識してみましょう!

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