「情報Ⅰ」を見据えて、小学生から楽しくプログラミング的思考を鍛えよう!

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小学校は2020年度から、中学校は2021年度から全面実施となったプログラミング教育。「プログラミングってなんだか難しそう」「小学生から学ぶ意味はあるの?」と、不安や疑問に思う方もいるかもしれません。

今回はプログラミング教育の内容や、大学入試「情報Ⅰ」を見据えて今から鍛えるべき力について解説します。エデュケーショナル・デザイン株式会社 水島 滉大さん、株式会社SRJ/一般社団法人 日本速読解力協会 安田 哲さんにも聞きながら、具体的に見てみましょう。

水島 滉大 先生

エデュケーショナル・デザイン株式会社

静岡県立大学経営情報学部卒業、高校教諭第1種免許状(商業、情報)取得。 前職は教員として情報や商業の授業を担当しプログラミング教育に精通。
現在はゲーマー、プログラマー、教育者の3方向から子供たちが楽しく学べるプログラミング教材の開発を行っている。

一般社団法人 日本速脳速読協会 理事 安田 哲

安田 哲 先生

株式会社SRJ執行役員 、一般社団法人 日本速読解力協会 理事

東京外国語大学大学院地域文化研究科修了。言語学を専攻し、言語に関する幅広い知識を有する。
大学院修了後、約20年間にわたり首都圏大手進学塾の現場の最前線で指導。科目の内容や進路に関する相談の他、家庭学習管理やモチベーションアップなどに関して、生徒・保護者の皆様との面談を多数行う。

Society 5.0では「課題解決」能力が必要

高校での情報Ⅰの内容

Society 5.0とは、狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会のことです。

Society 5.0は人工知能(AI)がビックデータを解析し、高付加価値を私たちに提供してくれる新たな社会です。例えば、自動走行する自動車、文章や絵の自動生成、工場で自動的に動くロボットなど、AIによる便利な機能が次々と現実になってきています。

こうした新しい社会で子どもたちが将来活躍するためにも、自ら課題を発見し、知識やデータを活用して解決手法を模索する力が求められます。こういった背景があり、小学生からのプログラミング教育がスタートしました。

水島先生

これからのデジタル社会で生き抜く力を育てるために、小学校から高校まで段階的にプログラミングや情報を学ぶことになりました。

内閣府:Society 5.0とは

全国学力・学習状況調査でも知識を問う問題が減少

プログラミング教育だけでなく、他の教科でも知識を「活用する力」が求められています。

どのくらい変化があるのか、旧学習指導要領と新学習指導要領の元で実施された「全国学力・学習状況調査」2年間の平均の内容を比較しました。

旧学習指導要領の平成29・30年の平均と、新学習指導要領の令和4・5年の平均を比べると、活用する力が求められる問題が14%増えている事がわかります。

一般社団法人 日本速脳速読協会 理事 安田 哲

安田先生

この、「活用する力」が必要な問題が増えているところが、文部科学省が目指す姿を現しているのかなと思います。

プログラミングの授業では何を習う?

小学校で習うプログラミングの内容

小学校では「プログラミング」という教科があるわけではなく、プログラミング言語を覚えることが目的ではありません。「プログラミング的思考」の育成や、プログラミングのよさ等への「気づき」、コンピュータ等を上手に活用しようとする態度の育成を図ることが望まれています。

小学校プログラミング教育の手引では、以下のような指導例が挙げられています。

出展:小学校プログラミング教育の手引(文部科学省)

算数

例えば、「辺の長さが全て等しく、角の大きさが全て 等しい」という正多角形の意味を用いて正多角形を作図するといった課題を設定し、定規と分度器を用いた作図とプログラミングによる作図の双方を試みるといったことが考えられます。

理科

例えば、日中に光電池でコンデンサに蓄えた電気を夜間の照明に活用する際に、どのような条件で点灯させれば電気を効率よく使えるかといった問題について、児童の考えを検証するための装置と通電を制御するプログラムとを作成し実験するといったことが考えられます。

家庭

学習活動としては、例えば、炊飯に関する一連の手順についてプログラミング体験を行い、ご飯がおいしく炊けたり炊けなかったりする原因について考え、話し合うなどの活動が考えられます。

この他にも、クラブ活動や総合的学習の時間等、学校の裁量時間を確保し、アニメーションの作成、プレゼンテーション資料の作成、企業と連携したプログラミング学習があります。

中学校で習うプログラミングの内容

中学校では「技術・家庭科」の分野でプログラミングを学びます。小学校で習う内容から発展し、社会におけるコンピュータの役割や影響を理解するとともに、簡単なプログラムを作成できるように学びます。

中学校技術・家庭科(技術分野)内容「D 情報の技術」サイトでは、以下のような事例が公開されています。

出展:中学校技術・家庭科(技術分野)内容「D 情報の技術」(文部科学省)

お掃除ロボットに込められたプログラミングの工夫をシミュレーションで探ろう

「お掃除ロボット」の動きを動画で観察し、開発者がどういう意図でそのような動きをさせているのかを考える。プログラミング言語「Scratch」を 使用した「お掃除ロボット シミュレータ」で動作プログラムの開発を疑似的に体験。

チャットを応用して学校や社会の問題を解決しよう

まず、簡単な数当てゲームのプログラムを制作しながら,チャットシステムの基本構造を理解する。その後,学校や社会で「ネットワーク」によって解決できる問題を見つけ、その課題を解決するために必要なプログラムの仕様を整理し,実装したい機能とプログラムの構想をまとめ、制作する。

この他にも、防災や医療・介護、農業など様々なテーマで、社会をより良くするための課題を見つけ、解決策を検討し、プログラミングを構築するといった事例が報告されています。

高校で習う情報Ⅰの内容

高校では「情報Ⅰ」が必修科目となりました。プログラミングのほか、ネットワーク(情報セキュリティを含む)やデータベースの基礎等について学びます。また、2025年の大学入学共通テストからは「情報Ⅰ」が新設されます。

「情報Ⅰ」では、4つの項目で、基本的な情報技術と情報を扱う方法や知識を身につけ、実際に活用する力を養います。

情報Ⅰ 項目

(1)情報社会の問題解決
(2)コミュニケーションと情報デザイン
(3)コンピュータとプログラミング
(4)情報通信ネットワークとデータの活用

小学校からの取り組むべき対策とは

試行錯誤して課題を解決する思考力が必要

「情報Ⅰ」に必要な論理的な思考を身につけるためには、まずは楽しくコンピュータやプログラミングに触れることがおすすめです。

プログラミング学習を通じてデジタル領域の素養が身につくことはもちろん、論理的に物事を考える力やトライ&エラーを繰り返す試行力を高めることができます。これはAIという道具を使って何かを生み出す力にも繋がるのではないでしょうか。

水島先生

プログラミングはみんな大好きなゲームを実際に作りながら触れていくものなので熱中しやすく、とても相性がいいです。
面白いゲームを作ることで周りのお友達が褒めてくれて自己肯定感が上がり、さらにゲーム作りに熱中する子が多いです。

プログラミング学習と言っても、なかなかハードルが高いと思われるかもしれませんね。

小学校の授業でも統計に関することは学習します。例えば家族の身長の平均値を出してみたり、クラスの中での身長の中央値を出しても面白いですね。
複数のスーパーでの商品の値段の平均値を出してみて年間の比較をしてみたりすると、例えば野菜であれば季節変動なども見られて理科・社会の勉強にもつながるかもしれません。

身近にある数値をそのままスルーするのではなく、いろいろと観察して「やってみよう」と挑戦してみるところから、楽しさにつなげられるのではないでしょうか。

情報Ⅰでは読解力が必要な問題が出題

「情報Ⅰ」の大学入学共通テストの施策問題では、教科書で学ぶ知識の他に、読解力が必要な問題が出題されています。問題文、前提条件、表、図などを横断的に読み解く必要があり、目新しい設定がされていれば理解にも時間もかかります。

読解力は短い期間で身につけられるものではありません。国語や算数の文章問題が苦手だと感じている人は、読解力を身につける学習をしておきましょう。

一般社団法人 日本速脳速読協会 理事 安田 哲

安田先生

国語や算数だけでなく、英語の問題でも読解力が求められています。これは「英語」を学ぶだけでなく、どう活用するかが求められているということです。
これからの社会でどのような力が求められるのか、何を学ぶ必要があるのか将来のことを考えて学習の基礎となる「読解力」を鍛えることもおすすめです。

まとめ

情報Ⅰに向けてプログラミング的思考力と読解力を鍛えよう

  • 新たな社会Society 5.0では課題発見力、データ活用力、解決力が求められる
  • 全国学力・学習状況調査でも活用する力を問うテスト内容に変化
  • 小学生では、算数、理科、家庭、総合の時間にプログラミング的思考を学ぶ
  • プログラミングを楽しむこと、読解力を鍛えるトレーニングがおすすめ

将来、子どもたちが生きる社会はどのようになっているでしょうか。AIの発展が進むこれからの社会では、AIを使い課題を解決する力が求められます。子どもたちの可能性を広げるためにも、プログラミング的思考力や、基礎的な読解力を鍛えましょう。

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