STEAM教育って?学校での取組みや今後の課題とは

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「STEAM教育」という言葉を知っていますか?
聞いたことがあっても「どういう内容かよくわからない」「STEM教育と何が違うの?」と、しっかりと理解できていない方も多いのではないでしょうか。

今回は、STEAM教育の全体像と今後の課題について解説します。

STEAM教育とは

STEAM(スチーム)は、5つの科目を組み合わせた造語

STEAM教育のSTEAMは、科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・芸術(Art)・数学(Mathematics)の5科目の頭文字を組み合わせた造語です。
つまりSTEAM教育とは、文系や理系という枠にとらわれずに、各教科の学びを基盤としつつ、様々な情報を活用しながらそれを統合し、課題の発見・解決や社会的な価値の創造に結び付けていく資質・能力の育成を目指していく教育方針のことです。

(参考:文部科学省 STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について

5つの科目の学習を通して、今後のIT社会に順応できる人材を育てていくことを目的としています。

STEAMの5科目が持つ役割とは

では、5つの科目それぞれがどのような役割を持っているのか見ていきましょう。

科学(Science)

STEAM教育の科学は、あらゆることに好奇心を持つ子どもを養うという役割を持っています。科学を通して課題や法則を見つけることで、数理的思考の土台を作ります。
授業では実験やフィールドワークの時間が設けられています。

技術(Technology)

STEAM教育の技術は、プログラミングの授業を通して、論理的思考力や課題解決能力を養う役割を持っています。これは、STEAM教育の「IT社会に順応できる人材を育てる」という目的に大きく繋がります。
2020年度からは、小中学校でのプログラミング授業も必須になっています。

工学(Engineering)

STEAM教育の工学は、何かを工作したり、想像したものを形にしたりという力を養う役割を持っています。
具体的には、プログラミングを組んだロボットを工作したり、図面を描いて作ったりという授業が設けられています。

芸術(Art)

STEAM教育の芸術は、自由な発想力や想像力の育成を通し、イメージの言語化や表現力を養う役割を持っています。いわゆる美術といった絵画やデザイン以外にも、音楽や演劇、グラフィックアートも含まれます。
また、「Liberal Ars(教養)」もSTEAM教育のArtに含まれていて、人文科学、社会科学、自然科学などといった分野も学びます。

数学(Mathematics)

STEAM教育の数学は、数学という科目を通して論理的思考力を養う役割を持っています。
論理的思考力は数学だけでなく他の科目でも課題を解決したり、自分の意見をまとめたりするときには必須の力なので、とても重要な役割を担っています。

STEAM教育が始まった背景

STEM教育が派生した教育方針がSTEAM教育

STEAM教育とは別にSTEM(ステム)教育という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。
STEAM教育はもともとSTEM教育から派生した教育方針なのです。
STEM教育は、「科学(Science)・技術(Technology)・工学(Engineering)・数学(Mathematics)」の4科目の頭文字から成り立っていて、それに「芸術(Art)」が加わったものがSTEAM教育です。

STEM教育は論理的思考や問題解決力の育成を目指していました。
しかし、AIが発達していく社会の中で、子どもたちはそれに打ち勝つための創造力を養っていく必要性が高まり、「芸術(Art)」が加わったことでSTEAM教育が始まりました。

Society5.0との関係

Society5.0という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。
Society5.0とは、「仮想空間と現実空間を高度なシステムで一体化させ、社会的課題の解決と経済的発展を実現する人間中心の社会のこと」を指します。

狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。

(参考:内閣府 Society5.0

Society5.0が目指すのは「誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会」です。
実現するためには、課題発見・解決力、創造力、論理的思考力などを備えた人材の育成が必要ということから、STEAM教育が注目されています。

日本におけるSTEAM教育の取り組み

では実際に日本ではどのようなSTEAM教育の取り組みがなされているのでしょうか。いくつかご紹介します。

GIGAスクール構想

GIGAスクール構想とは、生徒1名に対して1台の端末と高速大容量の通信ネットワーク環境などを整備する取り組みのことです。

2019年に文部科学省から提唱され、5年以内に実現することを目標としていましたが、新型コロナウイルスの影響で前倒しとなりました。
文部科学省が発表した2022年度末時点の「義務教育段階における1人1台端末の整備状況」では、全自治体のうち99.9%が整備完了しています。

GIGAスクール構想が実現することで、子どもたちが安心安全にICTを使いこなすことができるネットリテラシーなどの情報活用能力の育成や、個別に最適化された学びや創造性を育む学びにも役立ちます。
さらに、ICT教育を通じ、子どもたちが社会の変化を前向きに受け止め、創造力を養いながら自立して過ごせる人間性を育成することを目指しています。

子どもたちがSociety5.0を生きていくためにも、GIGAスクール構想の実現は必要なのです。

(参考:文部科学省 GIGAスクール構想について

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の指定

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)とは、先進的な理数系教育を実施している高等学校のことで、文部科学省からの指定・支援を受けています。

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定された高等学校では、理科・数学等に重点を置いたカリキュラムの開発や大学等と連携して先進的な理数系教育を実施し、将来の国際的な科学技術人材の育成を図っています。
学習指導要領にはないオリジナルのカリキュラムを開発することができるなど、生徒が課題解力を身につけられるような授業の実現も可能になっています。

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定された高等学校は2022年度で全国217校あります。
もしかすると家の近くに指定校があるかもしれません。各校のホームページでは活動の様子も紹介されているようなので、ぜひ探してみてください。

(参考:文部科学省 スーパーサイエンスハイスクール(SSH)

STEAMライブラリー

STEAMライブラリーとは、経済産業省が公開している無料のデジタルコンテンツライブラリーで、130以上のコンテンツが提供されています。
データ分析、ロボット、ものづくりといった12のテーマに分けられており、そのテーマにそった動画を視聴することができます。

難しく思うテーマでも、身近な切り口から紹介されていたり、アニメになっていたりと、気軽な気持ちで子どもたちが視聴できるような仕組みになっています。
また、ひとつの動画もコンパクトにまとめられているので、見ていて飽きません。

興味を持ったテーマを視聴したことをきっかけに、子どもの好奇心や探求心をさらに掘り下げていくことができます。

(参考:STEAM Library

STEAM教育の課題

ICT環境の整備が不十分

前述で、STEAM教育の取組みとしてGIGAスクール構想を挙げましたが、現時点でICT環境の整備が不十分な学校が存在します。

文部科学省が2023年2月に発表した「校内通信ネットワーク環境整備等に関する調査結果」では、校内ネットワークの供給は全自治体のうち99.9%で開始されています。
しかし同時接続の際に通信速度が遅くなる等、インターネット接続速度の面では問題がまだ残っているようです。

過去の調査と比べると改善してきていますが、教育現場でのSTEAM教育の進展に大きく関係するため、早急にICT環境の整備を整えることが必要です。

専門分野の知識を持つ指導者が不足している

5つの科目を横断しながら学んでいくSTEAM教育では、それぞれの専門的な内容が設けられています。
そのため、指導者も専門分野の知識やそれを教えるスキルを身につけていることが求められます。
しかし、そのような指導者はまだ不足しているため、指導者の育成や確保が必要です。

日本での認知度や注目度が低い

他国と比べ、日本におけるSTEAM教育の認知度はあまり高くありません。
それ故に、STEAM教育に対する意識や取組みへの姿勢も、学校や地域によって差が出てしまっています。

STEAM教育を浸透させるためにも、このような格差をなくし、どこにいても子どもたちが平等に教育を受けられる環境を整えていくことが大切です。

まとめ

STEAM教育で課題解決力と創造力を養う

  • STEM教育に「Art」が加わりSTEAM教育が始まった
  • STEAM教育の発展にはICTの環境を整えることが必要
  • 指導者不足や認知度の低下が課題

STEAM教育は、5つの異なる科目を学びながら問題を発見したり解決したりする力を身につけていく横断的な教育方針です。
Society5.0の実現に向けた人材育成のために必要不可欠なSTEAM教育ですが、他国に比べて日本の教育現場ではしっかりと浸透していません。家庭や習い事を通してSTEAM教育に触れることもできますので、まずは身近なところから子どもの視野を広げてみてはいかがでしょうか。

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