小学生の頃の体験活動が、意欲や心に影響?家庭でも体験しよう
公開日:2023.05.26
最終更新日:2024.09.10
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体験活動とは、子どもが多くの人と関わりながら体験を積み重ねる事により五感を通じて何かを感じ、学ぶ取組のことです。体験活動が豊富なほど、意欲や関心が高いとされながらも、近年、体験活動の場や機会の減少が指摘されています。
この記事では、文部科学省の発表した分析と、家庭でもできる体験活動を紹介します。
目次
体験活動の内容と育成したい力
体験活動とは、文字どおり、自分の身体を通して実地に経験する活動のことです。
近年、インターネットやテレビ、ゲームによる「疑似体験」や「間接体験」は圧倒的に増えました。しかし、ヒト・モノや実社会に実際に触れ、かかわり合う「リアルな体験」が減っていることが、子どもたちの成長に負の影響を及ぼしているのではないかと懸念されています。
国立青少年教育振興機構では、発達段階に応じた望ましい体験の在り方の枠組みとして、 「子どもの成長を支える20の体験」と「体験を通して育成したい12の資質・能力」をとりまとめています。
子どもの成長を支える20の体験
動画やゲームでは見た、疑似体験したことあるけれど、実際には見たことがない、体験していないということも多いのではないでしょうか。
子どもの成長を支える環境を実現するためには、大人が意図的・計画的に多様な体験の場を作っていくことが大切です。
体験を通して育成したい12の資質・能力
学ぶ力、やり抜く力、コミュニケーション力、礼儀作法、健康管理、自己肯定感、積極性、協調性、道徳観、自立心、勤労観、公共心
最近では地域の人と交流することが減り、一昔前のように“他人に叱られた”という事もめったに無いでしょう。
いつも一緒にいる家族だけでなく、他者との関わりで気がつくこと、学ぶことは子どもにとって大きな糧となります。
近くにいる大人は、温かく見守りつつも、褒めたり、悩みを聞いたり、時には正しく叱ったりしながら、心の成長を促す働きかけを、積極的に行っていくことも必要となります。
引用:国立青少年教育振興機構 こどもの成長を支える20の体験(PDF)
体験活動はその後の成長に好影響
文部科学省では、2万人以上の子どもを0歳から18歳まで追跡調査したデータ「21世紀出生児縦断調査」を活用した、体験活動の効果分析を公表しました。
子どもの頃の「体験」は、その後の成長にどのような効果を及ぼすのでしょうか。
「体験活動」が多い子どもは自尊感情が高い
分析では、第12回調査(12歳頃)の回答に着目し、1年間での活動実施について「1〜2回」「3回以上」と回答された複数の項目を分析に用いています。
その後、17歳時の「自尊感情(自分に対して肯定的、自分に満足している、など)」を分析。得点は、「自然体験」が少ない子どもは27.9、多い子どもは29.4でした。その他、社会体験や文化的体験でも、体験の機会が多い子どもに良い影響が見られることが分かりました。
「体験活動」の影響
体験を多くすることによる影響を自然体験(キャンプ、登山、川遊び、ウインタースポーツなど)、社会体験(農業体験、職業体験、ボランティア)、文化的体験(動植物園・博物館・美術館見学、音楽・演劇鑑賞、スポーツ観戦など)に分けて分析したところ、自然体験では主に自尊感情や外向性、社会体験では小・中・高校生の時期の向学校的な意識(勉強・授業が楽しい)、文化的体験は全ての意識(向学校的な意識、自尊感情、外向性、精神的回復力、心の健康)に良い影響が見られることが分かりました。
「読書」が多い子どもは好奇心旺盛に
読書については、第7回調査(7歳頃)の回答で分析が行われました。1か月の間に何冊本(小説、絵本など)を読んだかに関し、「読まない、1冊、2-3冊、4-7冊、8-11冊、12冊以上」の選択肢で回答。
その後、14歳時の「向学校的な意識」を分析。「楽しいと思える授業がたくさんある」と回答した割合は、読書冊数が少ない子どもは66.8%、多い子どもは74.1%となりました。その他、新しいことに興味を持つことや、将来に対して前向きな考えを持つなど、良い影響が見られています。
「読書」の影響
読書を多くすることによる影響を分析したところ、新奇性追求(新しいことに興味を持つ、など)や感情調整(自分の感情を調整する、など)、肯定的な未来志向(将来に対して前向き、など)といった精神的な回復力や、小・中・高校生の時期の向学校的な意識に良い影響が見られることが分かりました。
このことから、小学生の頃に体験活動(自然体験、社会体験、文化的体験)や読書などをした経験は、長期間経過しても、その後の成長に良い影響を与えていることが分かりました。
自尊感情(自分に対して肯定的、自分に満足している、など)や外向性(自分のことを活発だと思う)、精神的な回復力(新しいことに興味を持つ、自分の感情を調整する、将来に対して前向き、など)はすぐに高められるものではありません。
子どもの健やかな成長のためにも、家庭だけでなく、地域や学校等と連携し、できるだけ多様な経験ができるよう力を合わせてサポートしたいですね。
コロナ禍で体験活動が減っている
新型コロナが流行し始めた2020年度から約3年間、子どもたちの体験の多くが失われました。今まで当たり前にあった遠足や運動会、部活動、修学旅行、社会科見学などが縮小や中止され、通常の授業さえもままならない時もありました。常日頃からマスクを付け、会話をするときには距離を置く、県をまたいだ移動の制限などコミュニケーションにも支障がでました。
文部科学省は令和4年6月、コロナ禍で減少した青少年に対する体験活動の充実を図るため、「教育進化のための改革ビジョン」に基づき、「子供の体験活動推進宣言」を発表。子どもたちのリアルな体験活動を推進するため、情報発信や、学校、地域、企業の連携体制の構築を目指しています。
「子供の体験活動推進宣言」(令和4年6月)
家庭でできる体験活動
幼児〜小学校低学年におすすめの体験活動
一人一人の心身の成長に合わせて、家庭でも体験をしましょう。失敗することや、叱られること、けんかをすることも体験です。
そこで様々な感情(うれしい、感動、悲しい、悔しい等)を体験し、気付き(分かる、発見する等)を得られるようにサポートしてください。
体験活動例
自然体験…ササ舟や押し花をつくってみよう
文化芸術体験…石に絵を書いてみよう(ストーンペインティング)
地域行事…地域のおまつりやイベントに参加しよう
生活習慣例
規則正しい生活…洗顔、歯磨きをきちんとしよう
お手伝い…洗濯物をたたむ、部屋のお片付けをしよう
家族行事…誕生日のお祝い、季節の行事を楽しもう
読書…読み聞かせ、絵本を読もう
小学校高学年以上におすすめの体験活動
できることが増える高学年では、集団スポーツや料理の体験もおすすめです。
また、高学年になると就寝時間や食生活の乱れもみられます。規則正しい生活にも気をつけましょう。
体験活動例
自然体験…庭や部屋でお家キャンプをしてみよう
文化芸術体験…ダンスや楽器演奏にチャレンジしよう
地域行事…地域のスポーツ大会やイベントに参加しよう
生活習慣例
規則正しい生活…休日も早寝早起きを心がけよう
お手伝い…料理や掃除をしよう
探求学習…気になったことをネットや辞書で調べよう
読書…小説や漫画を読もう
まとめ
子どもの頃の体験活動がその後の成長に好影響
- キャンプや登山など、自然体験が多い子どもは自尊感情が高い傾向
- 読書体験が多い子どもは勉強・授業を楽しいと思っている割合が高い
- 家庭でも遊びやお手伝い、読書を通じて体験活動ができる
現代の子どもたちは、核家族化やデジタル化でリアルな体験が不足していることが指摘されていました。さらにコロナ禍でこの傾向に拍車がかかり、家庭の経済環境等によって体験活動に格差が生じているとの指摘もあります。子どもたちのリアルな体験活動を推進するため、家庭、地域、学校が協力しサポートすることが大切です。
体験活動
自然体験、集団活動、地域行事、社会貢献、職業体験、文化芸術体験、科学体験、国際交流体験
生活習慣
規則正しい生活、遊び、お手伝い、家族行事、運動・スポーツ、読書、動植物とのふれあい、探究学習
人との関わり
家族とのかかわり、友達との関わり、先生との関わり、地域の人との関わり