高校で金融教育が義務化~目的は?何を学ぶの?~

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2022年4月から高校では金融教育が義務化されました。
今まで子どもたちは、家庭や生活の中でお金の使い方を学んでいましたが、学校で正しい知識を教育すべきという流れへと変わってきています。

今回は、高校での金融教育についてご紹介していきます。

高校での金融教育が始まった理由とは

学習指導要領の改訂を受け、高校での金融教育が義務化されました。
では、なぜ高校で金融についての知識を身につけるべきだと判断されたのでしょうか。

若い世代での金融トラブルの増加

2022年4月1日から、成年年齢が20歳から18歳へと引き下げられました。
成人になると、親の同意なしにクレジットカードが作成できたり、高額な商品を購入する際にローンを組んだりということができるようになります。

もちろん成人に達するまでは、そのようなお金の使い方ができなかったわけですから、自ずと金融関係のトラブルや心配ごとは増えてしまいますよね。

実際に、全国の消費生活センターなどには、20歳代からの相談件数が多く、投資や高額請求などに関するトラブルが多く寄せられています。
未成年者は親の同意なしで契約した場合、民法で定められた未成年者取消権によって契約を取り消すことができますが、成人は契約を取り消すことができません。
このようなトラブルに巻き込まれるのを事前に防ぐために、成人を迎える前に金融知識を身につけることが必要なのです。

参考:若者の消費者トラブル| 独立行政法人国民生活センター

金融リテラシーを身につけるため

金融と経済の知識を正しく理解して判断することを「金融リテラシー」といいます。
金融リテラシーを身につけることで、詐欺に巻き込まれるトラブルを回避できたり、ローンの組み方について正しく判断したりすることができます。

トラブル回避やお金の正しい使い方は、私たちが生きていく上では必ず付きまとうものですから、社会に出る前から金融リテラシーを身につけることは、経済的な自立や安定した生活にも繋がっていきます。

海外の金融教育は日本より進んでいる

日本人は諸外国に比べて金融リテラシーが低い

金融広報中央委員会が公表している「金融リテラシー調査2019」では、日本人の金融リテラシーは諸外国に比べて低いという結果が出ています。

米国調査との比較

・共通の正誤問題の正答率は、日本47%(前回:47%)に対して米国53%(同:57%)と、米国が日本を上回っている。
・なお、「金融知識に自信がある人」(「とても高い」と「どちらかとかいえば高い」との合計)の割合は、米国は76%と日本の12%を大きく上回っている。

OECD(経済協力開発機構)調査との比較

・共通の正誤問題を比較すると、金融知識についての正答率は、英国、ドイツ、フランスは日本を上回っている。
・望ましい金融行動を選択した人の割合と、望ましい考え方を選択した人の割合についても、英国、ドイツ、フランスは日本を上回っている。

参考:金融広報中央委員会「金融リテラシー調査2019」

さらに、米国との比較の中で「金融教育を学校で受けた人の割合」という項目では、日本の7%に対して米国は21%と大きく差が出ています。
金融教育を受ける環境が、大人になってからの金融リテラシーに大きく影響することがわかりますね。

海外ではどのように金融教育を行うのか

金融リテラシーが高い海外では、どのように金融教育を行っているのでしょうか。

米国では、共通の教育カリキュラムは設けられていませんが、1960年代ごろから金融教育は始まっていて、現在も各州や学校で金融教育が盛んに行われています。

また、英国では「シティズンシップ教育」と呼ばれる必修教科が導入されています。
シティズンシップ教育とは、「市民としての資質・能力を育成するための教育」のことで、お金に関わることもこのシティズンシップ教育に含まれています。

数学に金融の内容が組み込まれていたり、金融リテラシー育成のためのガイドラインが設けられていたりと、米国の金融教育はとても力が入っています。

高校の金融教育で学ぶこと

では実際に、日本の高校ではどのような内容で金融について学ぶのでしょうか。

家計管理とライフプランニング

高校卒業後、自身でお金を管理していく場面が増えていくということを想定し、家計管理やライフプランニングについて学びます。

主に学ぶ内容

  1. 家庭の収入と支出を管理(家計管理)し、貯蓄をしましょう。
  2. 将来どんな人生を送りたいかを考え、具体的に人生の希望や計画を時系列に描いてみましょう。(ライフプランニング)
  3. 年収の違いを含め多様な働き方を知ったうえで、自分がどのように働くかを考えましょう。
  4. 「教育」「住宅」「老後」という人生の3大費用に対して、計画的に準備しましょう。

お金の使い方

今、普及しているキャッシュレス決済と現金支払いとの違いや、正しいお金の使い方について学びます。

主に学ぶ内容

  1. 「必要なもの(ニーズ)」と「欲しいもの(ウォンツ)」に分けて、お金を賢く使いましょう。
  2. 家計管理では、収支を黒字にすることが基本です。
  3. キャッシュレス決済のメリット・注意点を知り、自分に合った使い方を考えましょう。

お金の備え方~社会保険制度と民間保険~

社会保険を正しく理解し、民間保険を賢く利用するための知識を学びます。

主に学ぶ内容

  1. 様々なリスクに備え、みんなで少しずつお金を出し合って、必要なお金が支払われる仕組みが「保険」です。
  2. 日本には社会基盤としての社会保険制度があります。
  3. 民間保険には、生命保険と損害保険があります。
  4. ライフプランに合わせて、社会保険、資産形成、民間保険の利用を組み合わせましょう。

お金の貯め方、増やし方~資産形成~

NISA(少額投資非課税制度)も18歳から利用できるため、資産形成についての正しい知識がさらに必要です。
資産形成については基礎と応用に分かれていて、学ぶ内容も他に比べて多くなっています。

主に学ぶ内容

  1. 目的別に金融商品を活用しながら、自分に合った資産形成を行い、将来に向けて準備しましょう。
  2. お金を預けると利子をもらえ、お金を借りると利子を払わなくてはいけません。
  3. 元本のみに利子がつくことを「単利」、利子も運用すれば利子にも利子がつくことを「複利」といいます。
  4. 金融商品の3つの基準「収益性」「安全性」「流動性」を全て満たす商品はありません。
  5. 「預貯金」「債券」「株式」「投資信託」の特徴を知りましょう。
  6. 投資とは自分の資金を経済活動に提供することで、利益の一部を受け取ることです。経済活動により、私たちの生活がより豊かで便利になります。

お金を借りるということ

18歳になるとクレジットカードが作成でき、ローンを組むこともできます。
正しい知識を身につけて、無理なく利用するための方法を学びます。

主に学ぶ内容

  1. お金を「借りる」と一般的に利子(金利)が発生します。元本と利子、両方を返済する必要があります。
  2. クレジットカードの利用もお金を借りることになります。
  3. 借りる前に返済のイメージを持ちましょう。
  4. 金利や借り過ぎに注意が必要です。
  5. 必要に応じて、奨学金の仕組みを理解し活用しましょう。

金融トラブル

投資詐欺やマルチ商法などといったトラブルに巻き込まれないために、正しい知識や対応法を学びます。

主に学ぶ内容

  1. 金融トラブルの手口を知りましょう。「絶対に儲かる」はありません。
  2. トラブルを避けるには、
    ①おいしい話には気をつける
    ②向こうから近寄ってきてもはっきり断る
    ③万が一トラブルに遭っても、決して諦めないこと
    が大切です。
  3. トラブルに遭ってしまったら、悪質な業者との契約の取り消し・無効を求めましょう。
  4. 188番(消費者ホットライン)に電話して相談しましょう。

参考:金融庁「高校向け 金融経済教育指導教材の公表について」

まとめ

高校での金融教育は、成年後に大きく影響する

  • 高校で正しい知識を身につけることで、成年後の金融トラブルを回避できる
  • 日本人の金融リテラシーは諸外国に比べて低く、米国や英国では金融教育が盛んに行われている
  • 金融教育の授業ではシミュレーションや具体例を用いて、わかりやすく解説

成年年齢が18歳に引き下げられたことや、諸外国と比較して日本の金融教育が遅れていることから、高校での金融教育が始まりました。
お金は私たちの生活と切り離すことができない存在です。キャッシュレス決済も盛んになっている昨今、お金の正しい使い方や必要になる場面などについて、家庭の中でも話題にしてみてはいかがでしょうか。

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